ナイガイにとって失敗作だったレーシングスーツ。しかし、その精神や技術はいま、F-1レーシンググローブの参入へと大きく華開いた。
スポーツグローブを担当していたスタッフたちもF-1レーシンググローブの製作にはとまどったと言う。 スキーグローブでは世界各地に輸出もし、国内でも各種ブランド商品を手がけ高い評価を受けていた彼らであったが・・・・・・。
「まず驚いたのは、私たちにとって当たり前だった皮や布の伸縮性が、まったく関係ないものとされたこと。
最高時速350キロ以上、平均200キロのスピードで走るレーサーたちにとれば、グローブの1ミリ、2ミリの誤差がレースの勝敗はもちろん生死にもかかわる重大事項。スーツ同様、
世界の一流レーサーたちから、幾度もミリ単位で修正がかえってきました。まさにカルチャーショックです。
現在担当しているF-1レーシンググローブは、デサントとの共同開発によるゲルハルト・ベルガー、鈴木亜久里など。
自分が作ったグローブにOKの返事がもらえれば、それはうれしいですよ。
次の挑戦につながるエネルギーにもなります。」
トップダウンの考えに基づく技術革新。
新たなる挑戦をめざして------。
F-1という厳しい世界。その中でもトップと言われているレーサーたちとの交渉。 ナイガイにとって、グローブを通して彼らとコミュニケーションできたことは、何事にも変えがたい最良の経験となった。
トップレーサーに鍛えられ誕生したモータースポーツグローブなら、誰にでも通用する最高のグローブとなるはずだ。
モータースポーツへ積極的に参入することで、新しいナイガイのイメージが生まれた。 そして、これまでになかった新しい人脈、知友の輪が広がり、ナイガイ全社に新しい価値観といった空気が注入された。
同時に、スタッフたちが肌で感じ取ったF-1の持つ若さと可能性、エネルギーが起爆剤となって、新しいナイガイは誕生した。 トップダウンの考えに基づく技術革新は、今後ともナイガイに新しい波を起こし続けるに違いない。