未知の世界への挑戦。
新しいナイガイはその瞬間に生まれた。
レーシングカーの最高峰といわれるF-1。
世界を舞台にレーサーたちの熱い戦いが繰り広げられる。以前は一部のファンのものであったモータースポーツは、いまやファン層を一気に広げ、メジャー化を現実のものとした。
F-1グランプリ・レースとナイガイが出会うきっかけとなったのは10年前。
オートバイのプロレーシングスーツの開発というビッグプロジェクトへの参入であった。
すべてはゼロからのスタートだった。それまでのナイガイはカバン類をはじめ、衣料では婦人用スーツが90%をしめ、スポーツ関係と言えば、海外、国内向けのスキー手袋。 当時を振り返ってスタッフの一人は言う。 「今まで衣料というものに持っていたイメージが大きく変わりました。
実際、鈴鹿サーキットへ何度も足を運びました。 コースに出てスーツに使用する皮の磨耗テストをしたり、プロレーサーたちと幾度もミーティングを持ちました。 やはりプロレーサーたちと直接コミュニケーションが取れたことが大きかったですね。
例えば、一人ひとりの毎日の筋肉の状態に合わせてレーシングスーツを作るなんて、今までは考えもしなかった。」
最高時速230キロ以上、平均200キロのスピードでサーキットを自在に走るレーサーたち。 彼らにとっては、レース中のアクシデントがそのまま死亡にもつながりかねない。
「皮ひとつが、縫い目のひとつが生死を分けるかもしれない。実際ミリ単位で何度も修正がくる。でも面白かったですよ。 最終的にレーシングスーツが日の目を見ることはなかったけど、その経験によって得たことは実に大きかった。
技術面はもちろん、新しいことに挑戦したという充実感が私たちの財産になったと思います。新しいことに挑戦しなければ、次の何かが生まれてくるわけがないですから。」